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「喧嘩?---そんなんじゃありませんよ。ただ佐藤さんだけには甘えたくないんです」
俺の問いに相原は一瞬、考えた素振りを見せたが、すぐに軽く笑い否定した。
佐藤さんだけ---相原の妙な言い回しが気にかかる。
でも人間の不一致というか言いにくい相手、絡み難い相手と人によってそれぞれあるものだ。
いくら親しいからと言って何でも話せるわけじゃないし、逆に微妙な距離感があるからこそ話せることもある。
そう考えると何となく相原の言いたいことは分かるし、佐藤を誘えないのも分かる気がする。
でもそうなると佐藤と相原の間に近しい関係が存在するという事にもなり得るという事で……
考えれば考えるほどややこしく、つい深読みしてしまう。
でも、もし2人の間に何かがあったとしても当人同士の問題であり、俺には関係ない。
「まぁ、そんなのは人それぞれだからいいけど、さっきも言ったけど嘘をついてまで俺を誘わないで欲しい。相原の気持ちも分かるけど、俺も結婚してるし間違っても奥さんに誤解されるような事や不安にさせるような事は些細な事でも避けたい」
只でさえ、ほんの数日前に相原のことで喧嘩しかけたというか気にされたばかりなんだから……
ふとあの時のことが脳裏を横切り、気持ちが億劫になってしまった。
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