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「俺は…」 先生の息が、 微かに頬を撫でる。 「もう二度と、 彼女以外の誰かを 好きになるつもりは無かった」 穏やかな言葉に、 わたしは思わず呼吸を止めた。 息苦しさが、胸を ゆっくりと締め付けていく。 「初めて好きになった人だから、 …忘れ方を知らなくて。 だから、彼女が 俺の隣から居なくなった時、 …そのぽっかり空いた場所を、 俺はそのまま大切に 取っておいたんだ。 もう、他の誰もいらない。 だって、もしもそこに 違う誰かが入り込んでしまったら、 あいつが寂しがると思った。 悲しい顔をたくさん 見て来たから、もう 悲しませたくなかったし、 何より俺自身、その場所を そっとしておいてほしかった。 誰も居なくなった空間を、 ただ毎日、ぼんやり眺めて、 思い出を映しながら 生きて行けばいいって… そう思ってた。 それくらい、 俺にとっては…大切な人だった」
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