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――あの日以来。淡々と過ぎる日常。
会社、家、出張、と単調で何の変化もない毎日だ。
変わった事といえば村上が婚約してついに式の日取りが決まった事くらい。
決して代わり映えしない毎日に、足りないものは何かわかっていても意識しないように――
しているつもりだった。
それは、外回りから戻ってきて、いつものようにフロア入口から見えた成田の後ろ姿
軽く束ねた髪が、綺麗にカールしていて。
――すぐに気がつく自分に、失笑。
席について、隣にいた茜を見た
「どっかいくの?」
「え?何が?」
きょとんとした茜の顔を見て、
「いや。」
――コイツとじゃねーのか。と、その瞬間。背後を成田が通りすぎるのが目に入った。
思わず身体が立ち上がって、そのまま同じ方向に向かう。
――無意識、じゃなくて。
確信。これ。
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