第2話

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「どうして足が動かないのかしら……」 なかば飽きれたような声しか出せない。 院長先生に怒られるときだって、こんなにドキドキしたことないのに……。 シモンの顔を思い出すたびに、抱きしめられたあの時を思い出す。その温もりを思い出す。 「こんな時に限って、アーチーは来てくれないのね!」 少し拗ねたような口調になっているのが自分でもわかるけど、このまま一人では屋敷の中に入れる気がしないのだ。 ずっと、ここから動けない気がするんだもの……。 ――何かきっかけさえあれば……、いつものようにアーチーが来てくれれば動けるかもしれないのに。 「今日はもう帰りたい……」 はあっと小さく溜め息をつく。 でも、脳裏に浮かぶシモンの顔。 帰れない――。 帰りたくない……。 「そんなこと言わないでおくれよ」 クスリと笑われ言われた言葉に、 「――っ!?」 慌てて顔を上げたソフィ。
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