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「どうして足が動かないのかしら……」
なかば飽きれたような声しか出せない。
院長先生に怒られるときだって、こんなにドキドキしたことないのに……。
シモンの顔を思い出すたびに、抱きしめられたあの時を思い出す。その温もりを思い出す。
「こんな時に限って、アーチーは来てくれないのね!」
少し拗ねたような口調になっているのが自分でもわかるけど、このまま一人では屋敷の中に入れる気がしないのだ。
ずっと、ここから動けない気がするんだもの……。
――何かきっかけさえあれば……、いつものようにアーチーが来てくれれば動けるかもしれないのに。
「今日はもう帰りたい……」
はあっと小さく溜め息をつく。
でも、脳裏に浮かぶシモンの顔。
帰れない――。
帰りたくない……。
「そんなこと言わないでおくれよ」
クスリと笑われ言われた言葉に、
「――っ!?」
慌てて顔を上げたソフィ。
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