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*――*
ドキドキと心臓が駆けっこが終わった時のように、速く動いて――そわそわと落ち着かない。
――いつもどおり、ただ会うだけなのに。招かれたのが屋敷だからなのか、ソフィは高鳴る胸を抑えてゆっくり呼吸を繰り返す。
シモンの住む屋敷の壁にもたれて、そのままうずくまる。
――どうしてなのかしら。
心臓の音が体中から響いているようで、なかなか屋敷の門をくぐれない。
湖におぼれた時、この屋敷の中で眠っていたことが信じられない。
――いつも無視されるかもしれないと、緊張はしていたけど、こんなに胸がバクバクすることはなかったわ。
孤児院のみんなは、今日はお留守番。
でも、連れてくれば良かったと後悔している。
来たがっていたし、何よりこんなに緊張のような、……早く会いたいと焦っているような感情を持つと思わなかったから……。
この前この屋敷に忍び込んだ時はもっと気軽に入れたのに……。あの時と今のドキドキはどこか違う。
ソフィが抱えているのは、クッキーの入った籠。
少し焦げてしまったけれど、初めて作ったわりには上手に出来たと院長先生たちに褒められた。
シモンが望んでくれたのは初めての事だから夢中になって作った。楽しかったし、早く食べて貰いたい。
――なのに。
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