116.悲しみの心 苦しみの心 

2/16
97人が本棚に入れています
本棚に追加
/442ページ
あの日、敬里がいなくなった翌日。 道場で倒れていた総司は心肺停止の状態で、 救急車が到着するまでの間、心臓マッサージを繰り返し続けた。 救急隊員さんが到着して処置を変わった後は、 パパの元へと連絡をとって、総司を救急で受け入れてほしいとお願いし、 総司は無事にパパの病院へと受け入れられた。 処置室で緊急処置を行った後、人工呼吸器に繋がれたまま、 総司は今、眠り続けるパパが手配してくれた特別室のベッドで眠り続けていた。 私は、総司の病室へと回診に来た際のパパの言葉が頭から離れないでいた。 『瑠花、瑠花の身に起きている不思議な出来事を  パパもパパなりに精査したんだ。  敬里君として幕末の剣士沖田総司は現代へ来た。  そして元々いた、敬里君は、幕末の沖田総司として入れ替わった。  だけど……瑠花が見守ってきた鏡の中では、  敬里君は、沖田総司としてなくなってるわけじゃない。  でも……何かの話で、会津戦争でも沖田総司の姿を見かけたと綴られていたものもあった。  沖田総司として終わるべき命は、敬里君の命を失わせる形で、歴史が修正された。  そう考えると、何故、敬里君として生きる総司君が、この時期に、意識を失って眠りについてしまうのだろう。  パパが言うと胡散臭い、意味のないものになってしまうかもしれないけど、  敬里君が生まれて来るまでの過程のどこかで、歪みが生じ始めて、  現代で敬里君が生まれ出る事が出来ない状況下になっているのではないか?  だからこそ、この世界にない命を淘汰しようと、  何かの大きな力が働いているのではないかな』
/442ページ

最初のコメントを投稿しよう!