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あれから俺は、何をするのも少しゆっくりな気がする。
身が入っていないと言うのが正解かもしれないが。
俺は、冴羽 慎太郎。今だにサイトに入ったりはするが、小説を書いたりする気力はまだ戻らない。ハンドルネームはNEEDという。
ファンの子たちには悪い気がして、何行かは打つんだが。
気が乗らなくて、パソコンを閉じてしまう。
それは良い事ではないのだが。
どうも。な。
夜行が逝った時から、何だか術者としても勢いがない。
あの時までは、やってやるって気がしていたんだが。
それはそうだよな。
俺の目標は夜行を守る事だったのだから。
それが永遠に達せないと分かってしまった以上、やる気は起きないのが普通だろう?
夜行がやった事はおおむね術者たちには受け入れられたが、一部では断行過ぎると批判が上がっているらしい。
自分たちがやる気もなかったくせに何を言っているのかと、俺なんかは呆れているがね。
術者の世界も少し混乱しはじめている。
もちろん今までだって、仲良く手を繋いでやっていた訳じゃない。
派閥もあるし、仲違いもしていた。
それが表に出て来たというか。
…夜行がいなくなったから、俺が代表的な術者だぜって、名乗るやつが増えたって言うか。
四天王だとか、十二神将だとか。
そんな名前をうそぶく奴らが出張って来たのも、事実在る訳だが。
話を聞いても、お粗末な限りだ。
夜行と比べるなんて話にもならない。
術が偏った奴らがたくさん集まってそれを補う事はいいさ。
俺だって何でもできる訳じゃないし。
だけどそいつらが、やたらと夜行の事を批判するのはどうも。
聞き捨てならないって言うか。
…腹が立つって言うか。
居ない奴の事を、あからさまに蔑む奴を俺は信用できない。
まあ。それだけだけどさ。
今だに夜行の話は、術者の世界では沢山話されていて。その噂話は留まる事を知らない。
居なくなってからそんな話が出るって。
随分と怖がられていたんだな、夜行?
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