2/17
220人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
美咲を送った後、 運転手に行き先を告げ 慶太は、暗い車内を見回していた。 隔離された、後部座席。 異様な車内。 このタクシー、やっぱりおかしい……。 いったいなんなんだ。 慶太は息を殺して、様子を伺っていた。 前方のスクリーンが、家の近くを映し出した。 「そこで…」 慶太の言葉に、タクシーがブレーキをかけて止まった。 券売機のような機械に金額が表示される。 慶太は、そこに千円札をいれた。 出てきた釣り銭口から、小銭を取ると 機械からモーター音と共に出てきた青い紙を引き抜き、 慶太は出てきた紙を、 ジャケットのポケットに入れて、タクシーを降りた。 黒塗りのタクシーを、 小さくなるまで見送り アパートの前に立つ。 慶太は冷たい風に身震いして空を見上げた。 ふと、さっきまで一緒にいた美咲を思う。 美咲と明とのやり取りを思い出しにやりと顔が緩む。 少し気が強いけど 気取らない、いい子だったな。 思いのほか二人で過ごした時間は心地よかった。 冷たい風にぶるっと身震いして 慶太は慌てて、アパートの前でごそごそと鍵を探した。 玄関の扉をあけて 暗闇の中、手探りでスイッチをつけて、靴を脱ぐ。 「えっ……」 慶太は、呆然と立ち竦んでしまった。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!