4/17
220人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
恐る恐る、 部屋へ足を踏み入れた。 「誰かいるのか?!」 声を絞り出すように、 部屋に向かって、声をかける。 自分の声が、 恐怖でかすれているのがわかる。 得体のしれない恐怖が慶太を襲う。 キッチンから続く部屋のガラス戸を、勢いよくあけた。 「いるなら返事しろ!」 返事はない。 静まり返った部屋を見回して慶太は ほっと息をついて、 更に部屋を進む。 押し入れにかけより、ふすまを勢いよく開けた。 いない…… 扉を開ける度に、恐怖が少しずつ迫ってくるようで 足がもつれる。 全身が震える。 恐怖に飲み込まれないように 慶太はふっと、短く息を吐いた。 キッチンに戻って 風呂場の扉を、勢いをつけて開けた。 いない。 息を潜めて 誰かが隠れているような気がして 慶太は耳をじっとすました。 「トイレか?!」 人が隠れられる場所は、これで最後だろう…… 風呂場の横にあるトイレの扉に立つ。 ここで最後だ。 勢いをつけて、トイレのドアを蹴り飛ばしてみた。 誰もいない事に 安堵して慶太はトイレの前で息を吐く。 「いったい、どうなってるんだよ……」 頭を抱えて、しゃがみこんだ。 この部屋を勝手に変えて そいつが この部屋のどこかに、 隠れる必要なんて、どこにもない。 第一、 そんな事をして 何になるんだ…… じゃあ どうして? ここにあった俺の家具はいったいどこにいったんだ? 売ったとしても、二束三文だ。 利益どころか 返って大損する。 いや、売ってどうする?有り得ない。 冷静になれと また自分に言い聞かす。 慶太は 見知らぬ部屋をもう一度、ゆっくりと見回した。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!