1章『始まり』

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『現象』が、 初めて観測されてから10年… 検証を続けていた何人もの研究員の努力によって、現象の原因が判明した。 しかしそれは、人類に滅びを予感させる結果だった。 そして今日、その結果を元に世界を代表する人達による会議が開かれる。 呼ばれた人間は、各国を代表する政府の人間か、優れた科学者達だった。 『それでは、世界の存亡に関わる極秘会議を始めます』 そう言ったのは、スーツに身を包んだまだ若い青年だった。彼は、この会議の進行役を務めている。 「ああ、始めてくれ」 そんな彼に指示を出すのは、この会議の議長であり、この世界を統治する『10人委員会』の1人『ロバート=グラス』さんだ。 彼の見た目は近所にいるお年寄りのようだが、その実、凄い権力を持った実力者だった。 「まず、始めに今回の事は極秘事項とし、外部に漏らすことを禁止します」 「…な!?何を言ってるんだっ!! このままでは我々人類は……それを秘密にするなどあり得ん、お前達が秘密にしようとするなら、私が公表するぞ!」 そう叫んだのは『ヴェルナー=ハルバート』今年、45になる中年男性だ。 彼は、若くして世界に認められた数少ない科学者の1人だった。 故にこの場にも呼ばれたのだが、彼の信条は『人々の為の研究』であり、それと反する政府を毛嫌いしていた。 「まあまあ、少し落ち着きたまえ」 肩に手を置き、そう言ってきたのは隣の席に座る科学者の『ジョン=クラミー』だった。 彼は、ヴェルナーと歳が変わらないのに老けて見える、貫禄のある人物だった。そして、なにより 「ジョン、今は黙っていてくれ。私は政府の人間に話をしているんだ」 「おいおい、親友に対してその扱いはないだろぉ? それに、会議はまだ始まったばかりだ。意見するのは政府の見解を聞いてからでも遅くない」 「いや、遅い…今すぐにでも人々に今回の事を公表すべきだ」 「恐れながら言わせて頂きますが、我々政府は考えを変えるつもりはありません」 進行役の男性が2人の会話に割り込んだ。 「なに!?」 「…我々の見解を言わせて頂きますと、解決策のない今、事態を公表する事は余計な混乱を起こすだけだと考えられます。なので、」 ※『10人委員会』  世界を統治する代表者。  世界政府(地球での国連)の最高 機関。
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