第三章

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「おいお前。確かフレデリアだったな?」 「ああ、いかにも。俺はミリス・フレデリアだ」 ソーマの言葉に自信満々に自己紹介をするフレデリア。 「てめぇみたいなガキが居るからわざわざ言ってんだよ」 「なんだと?」 「いいか? 教えといてやる。ここは学園であり社交場なんかじゃない。ここでは貴族の格式など関係ない」 それは先程俺がアリアから聞いたことだった。 「そして毎年のように貴族の家柄に産まれたガキは同じことを言う。だがな、一つ教えてやる」 そう言い、ソーマは目を閉じ……次に目を開いた時には凄まじい殺気を放っていた。 「ひっ……!!」 フレデリアは思わず怯み、1歩後ずさった。 「・・・わかったか。これが殺意を向けられるという事だ」 やっぱり、ソーマは相当な手練のようだ。 これ程の殺気を瞬時に放つ。 それは難しいことだ。 殺気とは戦いにおける覚悟だ。 先程ソーマがしたように格下の相手を怯ませることも出来るが、本当の戦闘において殺気で相手が怯むことなんてそうそうない 。 殺気を放つということは、相手を刺し違えてでも殺すという、覚悟の表れだ。 まぁ、殺気なんてそれ相応の修羅場を生き抜いてなければ発することも出来ないが。 殺気を放つことが出来るというのは、強者と弱者の1つの壁と言えるだろう。 「・・・今年は少しはマシなのが混ざってるな」 その言葉はこちらを向いて放たれた言葉だった。 ・・・怯えるべきだったんだろうか。 いや、普通の生徒なら怯えるだろうな。 実際、先程のソーマの殺気に怯んでない生徒は片手の指で足りるくらいの数しか居ないし。 正確に言うと、俺とアイサとアリアとヒーナだ。 今更脅えても遅いだろうか・・・遅いだろうな。
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