第2章 出会い

6/7
62人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
その時は、まだあのふわぁっとした不思議な感覚の正体を知らず、若いのに凄いなぁと感心するばかりだった。 院長先生の見立ては正しく、私は右足小指をすっぱり骨折し瞬く間に足首まですっぽりと硬いギプスに覆われた。 整形外科の診断は、第五中足骨の骨折で全治1ヶ月だった。 1週間後に再度レントゲンを撮り、骨にズレがないか確認。 2週間後に、またレントゲンを撮り経過を見て、1ヶ月もすれば歩けるだろうと、今後の治療方針を伺い、松葉杖を渡された。 そのまま、お言葉に甘えて中尾さんに自宅に送ってもらった。 「今日はありがとうございました。院長先生にもどうぞ宜しくお伝え下さい。改めてお礼に伺いますね。」 と、中尾さんにお礼を言うと、 「院長の腕は確かですよ!うちに通えばいいのに!」 中尾さんは大きな声で言った。 待ち時間に沢山おしゃべりして打ち解けていた。 「うん。帰って主人と相談してみるね。」 と言ってさよならした。 自宅に戻り、主人にメールを入れた。 『骨折してしまいましたm(_ _)m早めに帰宅お願いしますm(_ _)m』 主人からの返事は、いつも短い。 『はぁ?』 だけ……。 普段から、ほとんど残業のない主人は早く帰って来た。 事の次第を話すと、まだ幼い娘、桜を怒鳴りつけた。 「なんで飛び出したんだよ!ふざけんな!」 「わぁ~~~~~ん!」 桜は、泣き出した。 主人は子供の泣き声が何より嫌いでイライラし初めた。 「お前もお前だ!助かったから良かったものの、死んでたらどうする!アホが!」 キレてしまうと、かなりの威圧感。 「ごめんなさい。」 しか言えない。 しばらくイライラした後、落ち着いて来たら、次は……。 「お前、ギプス汚くないか?そのまま家に入るな!シャワー浴びたか?病院行って汚いだろう?」 と始まった。 想定内の言葉。 主人は外部を異常に嫌う潔癖症だ。 「うん。足にビニール巻いて浴びたよ。汚いと思うならあなたの靴下頂戴?ギプスの上から履くから……。」 主人は伸びた靴下を持って来て 私に投げかけた。 ギプスの上から大きな靴下をかぶせる様に履き、想定内の主人の潔癖症に対する問題を回避して、小さく溜め息をもらした。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!