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プロローグ
息を切らす少女の後ろにいるのは人間ではない。人には見えない妖怪と言われる者。
なぜ追いかけられなければいけないのか、あの者は何か。
それを知らずに妖怪から逃げ続けている少女は、何もない所で勢いよく転ぶ。
そんな少女を見た妖怪は絶好のチャンスだと言わんばかりに一歩、また一歩と近づく。
(もうだめだ)
妖怪の指先が少女の瞳に迫る。
刹那、酷く低い叫び声が響いた。
「ぎゃあああ゛」
耳をつんざくような声。
何事かと瞑っていた目を開くと、そこには一人の青年。
少女を狙っていた妖怪はこの青年が消し去ったのだ。片手に持つ剣で。
少女は状況が掴めずただ呆然とする。
その時ーー今度は木の上からもう一人の青年が降りてきた。
青年は少女の前まで来ると、怯えているような少女へと手を差し伸べる。
「もう大丈夫だよ。立てる?」
ーーその手を取ったか取らなかったかで、物語が変わっていたのかもしれない。
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