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朝までずっと眠っている
聖のそばにいた。
たぶんやっと聖は
深い眠りに入れたのだろうと
松田先生が言っていた。
私がいる事に
安心したのだろうと。
無菌室を出る時、
そっと眠っている彼の
頬にキスを落とし
私は心で聖に伝えた。
最後までどうしても
彼に言えなかった言葉。
『さようなら、聖。
あなたは幸せになって』
無菌室を出た途端、
堪えていた涙が溢れ出した。
けれどいつまでも
後ろを振り返っていられない。
亜希ちゃんを迎えに
本庄駅に向かう車の中
私は大きく深呼吸して
最後の仮面をかぶる。
埼玉を去るまでの
残りの2日間で…
私は、まやかしの家庭とも
決別しなくては
いけないのだから。
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