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「それとこれとは別よ。本当にティオ種を救うなら、養育制度そのものを見直すしかないわ」
「現在はぐれてしまっているティオたちはそこに含まれないでしょう」
「……わかってはいるのよ」
国王が視線をはずし、窓のほうを見た。
彼女の夫も元ははぐれティオだったため、その懊悩の深さは理解できる。
だが、傷ついたティオたちの痛みを思い、解放してやるという半端なやさしさでは、彼らを救うことはできない。
傷はいつまでも痛み続け、恐怖におびえる日々が待っているだけだ。
だが、指摘されたとおり、十数名のはぐれティオをたったひとりでどうにかしてやれる方法がない以上、国王の決定に食い下がることはできない。
ただの王宮医師ではどうしようもないことだった。
「ご心痛、お察しいたします」
「ありがとう。それじゃ、お願いね」
「かしこまりました」
イグノトルは嫌味にならないよう気をつけて、正しい礼をした。
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