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そうだ、お風呂で思い出した。
一歌と俺が一緒に風呂に入らなくなったのは、確か俺が小学六年生の時。
小学六年生といえば、俺がオンラインゲーム「インフィニットアドベンチャーオンライン」に嵌り始めた頃だ。
あの頃は、オンラインゲームというものがとても新鮮で、途端に世界が広がった気がして、俺は夢中になってPC画面にメリ込まんばかりに「IAO」にのめり込んでいた。
あの頃は、「IAO」の世界が現実の世界よりも重要な気がしていた。
横から話しかけてくる妹が鬱陶しくてしょうがなく思えてしまった。
そんな年頃だったんだ。
「早く行けっての」
「のわっ」
最後の一段を降りようと足を上げたところで、後ろから腰に蹴りが入れられ、俺は軸足を滑らせ危うい形でラスト一段をずり落ちる。
こいつがこんなんになってしまった原因の一端は、俺にもあるのかもしれない。
だからといって、階段で前の人を蹴るなんて危険行為を、兄として見過ごすわけにはいかない。
「危ないだろ!階段で前の人を蹴ってはいけません」
「そんなこと知ってる。前に居たのがあんたなんだからしょうがないじゃん」
「全然しょうがなくねぇよ!?お前だって、俺に怪我されちゃ後味悪いだろ?」
一歌はそれ以上返事をすることなく、相変わらず不機嫌そうに俺を一瞥し、目を逸らしながら、
「ふんっ」
と再び鼻を鳴らし、俺を追い越してリビングへと入って行った。
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