《8》

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  くすくすと、勝手に笑いがこみ上げてくる。 見た? あの男の困った顔。面白かったわ。 心配そうに、まるで抱き起こそうとでもするかのような態度も。 普段とは違って、紳士的にさえ見えたわね。 ……ああ、やっぱり今日は変ね。 あんな男のことを、可愛く思うだなんて。 それより、ええと、次は何だったかしら。 次……そうだわ、次は私が招く番。 あの男を驚かせるような、お店を探さなきゃ……。 携帯をたぐり寄せる、つもりだったところまでは覚えている。 けれど私はそこで、力つきたようだ。 何とも言えない充足感に、満たされて。 佐川に対して初めて抱いた、感情。 それが、“尊敬”の類いだと、私が気づくのは……もう少し後の話。 .
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