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「……それは、どうも」
まさか羽山からそんな言葉が出るとは思わず、なんだか視線が落ち着かない。
「先輩は?彼氏、いるんですか?」
「ううん」
「居ても長く続かないタイプ?」
「……うん」
「だと思いました」
…………。
「羽山、私の事先輩だと思ってないでしょ?」
「そんな事ないですよ。先輩って呼んでるの先輩だけですよ?」
「……」
私の方が年上の筈なのに(1歳だけだけど)なんか下に見られてる感じがする。
「それに、続かない理由が分かるから」
羽山はそう言ってから綺麗な指先で瑠璃色のお猪口を持ち、日本酒を飲んだ。
その仕草がとてもゆったりしていて品がある。
育ちがいいのかな……。
「先輩、恋人とキスとか普通に出来ます?」
羽山の手の動きに視線を奪われていると急にそう言った。
切れ長の瞳が淀み無い視線を向ける。
「……」
「一瞬引いて見ちゃいません?」
頬杖をしたまま視線を逸らさない羽山は私に問う。
「口紅とかグロスとかはもちろんの事ですけど」
「言いたい事は、分かるよ」
私は皆迄言うなという様に掌を羽山に見せた。
「先輩って指細いですね」
私の手を見つめて羽山が右手を伸ばした。
「…………」
「先輩ちゃんと食べてます?手首細くないですか?」
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