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「簡単なこと?」
考えても考えても答えが出ないというのに、一体何が簡単だと言うんだろう。
「簡単よ。
その椎名さん、あんたと仲良くなりたいけど方法が分からないんじゃない?
ほら、好きな子には意地悪するってよく言うじゃない?
その嫌がらせも愛情の裏返しなんじゃないのかしら」
「は?」
予想外すぎる解答に間抜けな声が出てしまう。
椎名さんが私と仲良くなりたいとか、愛情の裏返しとかそんなことあり得ない。
だけど少しだけ、思い当たることがある。
「そういえば、椎名さんのせいで残業になった日は、必ず差し入れしてくれる」
―――・・・・・・。
椎名さんのせいで、高松さんから業務を言い渡され残業する。
定時のチャイムが鳴ってから、だいぶ時間経っていたので周りのデスクには誰1人、居なかった。
「あぁ、もう。全然、進まない。」
進まない作業にイライラが募り、集中できないのでパソコンの画面から一度目を離す。
伸びをしようと頭を上げると視界の隅に人を捉えた。
隣のデスクに人が居るとは思っていなかった私は、勢いよくそちらを見る。
「椎名さん!」
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