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えっと・・鍵は・・・。
鍵を取ろうとしてチェストの上を見るけど、いつもは置いてある鍵が無い。
あ、そうか・・・。
ハル、荻野 遥貴はここに居て、出て行ったのは夢じゃないと、現実を突き付けられる。
「ははは。合鍵、使うしかないか。」
自分を嘲笑うような、乾いた笑みを浮かべて、独り言を言う。
歪んだ笑顔になっている自分が泣きそうってわかってる。
けど無理に笑ってないと、身体が張り裂けそうになる。
引き出しの奥にある合い鍵を取り出し、ギュっと握る。玄関に向かって、重い体を引き摺り、ノロノロと歩く
玄関を出て、合い鍵で鍵をかける。ガチャンと音をたて、鍵が閉まった事を確認し、合鍵をポケットに入れた。
このまま、何もかも鍵をかけて、気持ちも過去も閉じ込めたらいいのになぁ・・
なんて、刹那的に考える。
そんな私の重く沈む気持ちと裏腹に、玄関の外は雲一つない快晴だった。
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