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躊躇う自分の為に握り拳を作って、息を飲み込み、足を踏み出す。 ゆっくりと一段ずつ階段を降りて行った。 中段に差し掛かり、ホームが私の視界に入って、荻野 遥貴は・・・ いない。 何処にも姿はなかった。 ホッとしたけど、不安とどす黒い感情が渦巻き、自分の心に濁流のように雪崩れ込む。 ホームに現れない荻野 遥貴。 電車で通勤してない。 直行したの?それとも・・家に帰ってない? 以前もホームに現れなかった・・。 その次の日はサキという女性が隣にいた時の事を思い出す。 嫌な予想が頭を駆け巡る。 それでも、まだ微かに信じたいと思う自分がいて、バカだと思った。 私を嫌いと言って、本当は好きならいいのになぁって・・。 やっぱり嫌いだよ。私の心がこんな風にさせる。ハルよりも酷い、もう一人のハル。
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