プロローグ

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あれは忘れもしない、小学四年生の秋ーー。 毎年楽しみにしていた運動会。 昔から走るのが得意で、決まってクラス対抗リレーの代表に選ばれるほどだった。 そしてこの年も各クラス男女六名のうちの一人に選ばれた。 「いっけー!」 「頑張れ、二組ー!!」 四クラス対抗で行われていたリレー。そのレースは接戦で、私のクラスである二組は二位につけていた。 どうしよう。緊張で手が震えてきちゃった。 私が走る順番は五番目。アンカーの前。 これが運動会の最後の種目で、うちのクラスは今、総合得点でも二位につけている。つまり優勝できるかはこのクラス対抗リレーにかかっている。 いくら走るのが得意でも、やっぱり緊張してしまう。 「次、準備して!」 先生に言われ、コースに立つ。四番目の走者にバトンが渡り、私の方へと走ってくる。 順位はさっきと変わらず二位のまま。だけど確実に一位との差は縮まってきている。 「中野!」 そして私に渡されたバトン。 沢山聞こえてくる歓声ーー。 そして、自分の鼓動ーーー。 走って、走って、前との距離を縮めて。 コーナーを曲がると見えてくる私を待つ彼の姿が見えてきた。 「中野ー!もう少しだ!頑張れっ!」 懸命に私を呼ぶ声。 そんな彼の期待に応えたくて、ラストスパートをかける。
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