五百年と五十年

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「一つずつ説明していこうか。共通する物が命っていうのはね、複数存在する世界の人間はまったく同じ物ってことさ。」 「…………は?」 「ようするに、君のいた地球とヴォイニックには同じ人間しか存在していないってこと。同じと言っても声と容姿が、だけどね。 だから、地球にはアリスちゃんとかニーナちゃんと、まったく同じ容姿をもった人間もいるよ。」 ………なんつー突拍子もない話だ。ヴォイニックには俺とまったく同じ容姿の人間がいるってことか? 「さて、では二つ目の共通する物、死についてだね。例えばα世界とβ世界があったとしよう。」 神はそう言うと、両の掌から光る球体を出した。 「私の右手の球体がα世界、左手の球体がβ世界だ。で、α世界にはAという人物が存在している。」 今度は右手の球体が人型に変わる。顔の部分にはAの文字が。 「α世界に存在する、ということはもちろんβ世界にも、名前や性格は違えどAという人物は存在しているわけだ。」 左手の球体が人型に変わる。こちらも顔の部分にAの文字が浮かんでいる。 「さて、ここからだよ、蒼壱君。ある日、α世界のAが死んだ。この時、β世界のAはどうなると思う?ヒント、死は共通している。」 神は右手の人型を握り潰した。左手の人型は残っている。 どうなるって聞かれてもな。ヒントは死は共通する物……? 死が、共通する物。 ………β世界のAは死ぬ?共通ってのはどの世界にも死が存在しているってことじゃなくて、ある世界のある人間が死ぬと、違う世界の同じ人間も死ぬってことか? 「………β世界のAは死ぬ?」 「そう、その通り。正解だよ、蒼壱君。α世界のAが死んだらβ世界のAも死ぬ。それは全ての世界にも共通している。同じ命が存在している、死は共通、この二つが全世界の大前提。」 神は左手の人型を握り潰しながらそう言った。 「…………気になる事を質問していってもいいか?」 「うん、いいよ。」 「じゃあ遠慮なく。共通する命は人間だけか?」 「そうだよ。ヴォイニックには地球では見たこともない魔物や動物がたくさんいるだろう?それがいい証拠さ。」 「何故人間だけをそんな状態にした?」 「強いて言うなら、なんとなく、だね。神ってのは気まぐれなんだよ。」
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