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「よそ見するなよ」
髪の毛の間にさっと指を差し入れられ、またも田原さんの方へと引き寄せられて。
私は…… 何も考えず、自然に彼の肩に手を回した。
そうしないと膝が地面に崩れ落ちる、と本能的に察知したからなのかもしれない。
この人のキスは猛毒同然だ。
今、正に、甘い痺れを全身に回されていて、彼に逆らえない状況に持ち込まれている。
田原さんとこんな風に長く熱いキスを交わすようになったのは、いつ頃からだろう。
つきあい始めの頃はどちらかといえば他の部位への愛撫の方が多かったから“セフレ”という立場の女に唇へのキスはしないという彼の中での線引きなのだと思っていたけど…。
最近はなぜだかやたらとキスで攻められることが多い。
どうしてなのかな……
そんなことを思っていたら、深い深いキスに終わりが来て。
唇が離れた二人の間には拳三つ分くらいの距離ができた。
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