アノ、三人娘

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間にあるローテーブルが唯一の堤防。 「聖ちゃん」 「ハイッ」 「……」 挙手が似合うくらい、良い返事。 クスリと笑われて。 「おいで……聖」 バクンと鳴る心臓。 あぁ、やっぱり何年経っても慣れないな。ドキドキは減ってかない。 テーブルを挟んで伸びてくる先輩の手。 掬う様に私の顔を包む。 「……お兄ちゃんって、言ってごらん」 「なっ……」 「ほら、言って」 妖艶な口元がいたずらに上がる。 「お兄、ちゃんは……そんな妖しい言い方はしません」 たぶん。居ないから判らないけど。 「いいんだよ、今日のお兄ちゃんは酷いから」 「……」 「愉しみだな」 「何が、でしょう……」 ニッコリ笑みで近づく先輩。 「聖ちゃんが“お兄ちゃんヤメテ”“お兄ちゃん許して”後はそうだな“もっと、お兄ちゃん”てこれから言ってくれるなんて」 ボンと熱くなる、先輩を直視出来ない。 「言っ、言わない――」 「言わせるよ、もっと凄い台詞も」 さーっと今度は青くなる。 クランクランする頭のまま、気づけば寝室で。 「え、いつの間に」 「おいで……聖」 だけどこの言葉にはめちゃくちゃ弱い。 釣られてしまえば試練が待っていると判っていても。 「聖……」 甘い罠に堕ちたいと思う私は。 「……先輩」 「今日はお兄ちゃん」 「……」 もう、色んな癖がついて、どこにもいけません。 「次は教師とかどう、聖ちゃん」 ――fin――
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