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「あ、もうこんな時間か」
開いていたアルバムを閉じ、辺りに散らばっている段ボールを端に寄せた。
「零は今頃なにしてるんですかね」
窓を開け遠い目をしながら空を見上げる。
暗くなった5月の夜は梅雨前ということもあり渇いた涼しい風が頬を撫でる。思い出に浸り感じていた熱が冷めていく。
不意に空腹を告げる音が腹部から聞こえた。
お昼食べてませんもんね。
窓を閉めキッチンへと歩いていくとチャイムが鳴った。
「はーい」
ペタペタと廊下を歩き二度、三度鳴るチャイムに声を出して答えた。
玄関にたどり着き扉を開けた。
「ゆーと!ただま!」
「お帰り雫(シズク)」
「ユウト!ただいま!」
「はい。お帰り零」
元気に右手を挙げ挨拶をする二人に応えた。
「すぐにご飯作るからその間に雫をお風呂に入れておいて」
「はーい。雫、お風呂入りますか?」
「入ります!」
「それじゃあパパと一緒に入ろっか」
「パパじゃない。ゆーと!」
「はぁーいつになったらパパって呼んでくれるようになるんですかね」
嘆いている間に雫は自分の着替えを揃えていた。
「それじゃあ入りますか!」
「あい!」
高校を卒業した僕はリンの力を借りて大学へと進学した。その後姫が社長を継ぐ訓練の一環として任せられたお菓子専門店でアルバイトをさせて貰い引っ越しのための資金を稼いだ。
姉さ・・・・・・零は大学で保育士になるための勉強を重ね見事を資格を取得し保育士として働き始めた。
僕は20歳になると同時にプロポーズし姉さん・・・・・・零と結婚した。
その後は絵に描いたような甘々ライフを送り続けやっと今日引っ越しを終えたのである。
「ゆーと!手止まってる」
「あ、はい。すみません」
この子は雫、僕と零の子どもだ。
絵に描いたような甘々ライフは雫も加わり今も続いている。
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