愛刀銀ちゃん

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八木邸の周りはのどかに畑が広がっている。 「ここをとにかく東に行けばいいって」 いいお天気だけど風がまだ冷たい。 「沖田さん、今日って何月ですか?」 「弥生だけど?」 夢の中は弥生?……えーっと、三月か。 現実では四月も終わりだったなあ しかし長い夢だよね 急に黄色の菜の花畑が視界に飛び込んできた。 「………すごい…きれい……」 一面黄色の菜の花畑……… こんな風景はじめてみた。 「沖田さん!すごくきれい!!」 この感動を分かち合おうと振り返ると …………いない 「沖田さん!?」 どうしよう とにかくこの道を東って言ってたから 「沖田さーん!」 叫びながら東に駆け出した。 しばらく走ると建物やお店も増えて人通りも多くなってきた。 「どうしよう。見つからない」 一度八木邸に戻った方がいいよね…… 来た道を戻りながら店をのぞいていく。 紺色の反物が積まれてる着物屋さん。 着物今着てるのしかないから欲しいなあ…… そういえば何もないんだよね。 足袋も袴も歯ブラシも下着だってないし。 ああ お風呂に入りたい。 とうとう沖田総司を見つけられずに、また菜の花畑まで戻って来ちゃった。 どうしよう。 目が醒めるような黄色の花の中に腰を降ろす。 菜の花の香。 見上げると薄い水色の空しか見えない。 目を閉じて胸一杯深呼吸した。顔にはぽかぽか春の日差し。 夢の世界みたい。
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