インビジブルガール

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 でも私の親も恵太達を責めている。何回もかかってきた電話は私の親からのものだったみたいだし、恵太もそれを否定しない。だからこの女の虚言でないと言えてしまう。  恵太達への恨み言を連ねた遺書を私が残した? そして自殺した? それが事実?  よくよく考えてみると、今日以前のことではっきり覚えているのは恵太と目の前の女が直談判しに来た三月のあの日であり、六月の今まで約三ヶ月も記憶が飛んでいる。恵太に裏切られてずっと引きこもって泣き続けた後、私はどうした?  胸がつっかえて息が苦しくなるが、私は思い出さなければならない。  悲しかった。苦しかった。疑問符ばかりが浮かんだ。憎かった。目の前が真っ暗になった。  ずっと恵太のことを想ってきた。恵太と結婚して一緒になる未来を思い描いてきた。恵太だけを私は愛してきた。なのに恵太はそうじゃなかった。恵太も私と同じ思いだと信じてきたのに違った。今まで二人で過ごしてきた時間、築いてきた関係、その全てが否定された。時間をかけて精密に作り上げたガラス細工が床に叩きつけられて一瞬で割れてしまうように、私と恵太の関係も崩れ去った。
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