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見張られた状態での脱出は、思ったよりも容易だった。
『朝ご飯、一緒に食べませんか?ずっとそんな所に立ちっ放しで、お腹も空いたでしょう。』
冷たい態度で追い出しておきながら、一晩中玄関の外にいたのであろう黒田さんに、何事もなかったかのようにいつも通りの声色で誘いを掛ける。
『…あの…昨日は本当に』
『その話はもう止しましょう。ご飯が冷めてしまいます、早く入って下さい。』
『…ハイ…』
大きな図体でショゲながら家に上がった黒田さんは、テーブルに並べた朝食を見て、
『こ、これを…私の為に?…ありがとうございます…!やはり、貴女はお優しい…』
急にテンションを上げ、先に私の椅子を引く。
その彼が急に顔色を変えトイレに駆け込んだのは、食事を半分程平らげた後だ。
『大丈夫ですか?黒田さん。』
『……』
『…私の下手な料理のせいですね…ごめんなさい。』
『いえっ…そんなことは…!…うっ!?』
置き薬を探すフリしながら何度もトイレへ戻る姿を追い、次第に準備は完了して行く。
『あのっ…薬が見つからないので、坂上さんの所へ行って貰ってきます。』
『だ、大丈夫…っ…ですから…!…自分で電話して…持って来て貰いま…うくっ…』
『無理なさらないで下さい、私のせいなんですから…!…直ぐに戻ります。待ってて下さいね。』
『ダメ、です…!一人で部屋を出ては…っ、はう…っ!』
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