プロローグ

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. ハローワークに定期的に通うようになってからもうすぐ半年が経つ。 特にやりたい事もない。 なりたい職業もない。 出来れば働きたくないし。 だけど、正社員じゃない人、普通と違うルートを歩んでいる人に対する世間の目は厳しい。 前田美奈子。 一応大学を卒業後、何となく就職をしたけれど、3か月で退職。 その後職を探すも面接に行けるどころか、書類で落とされるのがほとんどで、次の職にはありつけない。 現在、無職の所謂ニート。 せめて、私なんかでも養ってくれるいい人でもいれば、結婚という道もあるのだけど。 大して美人でも可愛くもない私に、それも無理だ。 今まで、何となく流されるままに生きていてそれでも上手くやっていけていたような私に、この社会からの外れ者みたいな状況には耐えられなくて、何となく正社員になりたいから、転職活動をしている。 どうして、こうなってしまったんだろう……。 大学で教職でも取っていれば、教員って道もあったかもしれない。 大学でちゃんと勉強していれば、大学院に行って研究者と言う道もあったかもしれない。 そもそも、何となく受かった大学だった訳で、違う学部に行っていれば違う就職先に行ってて、そこでなら上手くやっていけたかもしれない。 そもそも、何となく生きてきて何も頑張ってこなかった私は根性がなかったからすぐに仕事を辞めてしまったのかもしれない。 ああ……。 どこから私は誤った道に行ってしまったんだろう? どこからでもいい。 どこからでもいい。 でも、今じゃない、違うところへ、違う場所へ戻って、もう一度やり直せたら、今じゃない未来が待っていたかもしれない。 なんて、有り得ない事を考えていたハローワークの帰り道。 「前田美奈子さんですね……?」 「えっ……?」 突然私に話しかけてきたのは、黒いYシャツに白いスーツに、黒髪で七三に分けた髪の毛に、サングラス……。 まるで、ヤ〇〇のような男性が私に話しかけてきた。 えっ……。 私、さすがに借金を作った覚えはなかったのですが……。
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