Vol.09

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  考えるより先に、身体が動いた。 「何してん?」 自分から零れた声は、自分の声やないみたいに響いて。 目の前の二人は、驚いた様に俺を見ていて。 「……蓮、」 「っ、」 用のあったコンビニは目の前やけど、隆也の背中に隠れた朱音の腕を掴んで、 「ちょ、蓮!?」 隆也の声も無視して、来た道を戻る。 「あ、の、蓮さんっ、」 久々に耳に響く声。 俺の名を呼ぶ、声。 やけど、そんな声すら無視して歩き続ける。 ほんの5分程度の距離。 頭痛も治まってきたし、もう少し何かを食べよう思って向かったコンビニ。 その近くで、隆也の腕の中に居た朱音。 何やねん!アレっ!! 何なん?ホンマ。 もう、訳解らん。 「っ、蓮さん?」 「…………」 部屋の前。 鍵を開けて中に促せば、困った顔の朱音。 自分でも、何がしたいんか解らん。 朱音に嘘吐いたんも、俺。 朱音を傷つけたんも、俺。 今、困らせてるんも、全部、俺やけど。 「話くらい、聞いてくれてもえぇやろ」 「…………、」 それでも続く無言に、強く腕を引いて、扉を閉める。 もう、軽い犯罪やな?コレ。 居心地悪そに、困った顔で俺を見上げる。 「……あの、すみません、でした」 「え?」 「何か、あの日は、訳解らなくなっちゃって、私、責める権利も無いのに、あんな言い方して」 そう、俺に頭を下げる。 何でなん? 朱音が謝る事なんて、無いやん。 「……俺に、謝る事もさせてくれないねんな」 せやのに、朱音が謝るん? 全部、俺が悪いのに? 「蓮さんが、謝る事なんて、……無いじゃないですか」 「あるやろ?言ったやん。うそつき。て」 「アレは、……頭に血が上って、」 「俺が嘘吐いたんは、事実や」 あぁ。 何でやろ? 俺が悪いのに、何で、朱音を責める様な口調になってまうんやろ。 「怒ってるから、店に居てないんやろ?」 「ソレは、」 「俺の顔見たないから、居てないんやろ?」 隆也とは話すのに? そら、隆也が嘘吐いた訳やないで、俺が巻き込んだだけや。 やけど、あんなあからさまにされたら、流石に傷つくわ。 「怒ってる訳じゃ、ないです」 「せやったら、何なん?」 「だって、」 隆也の腕の中に居て、俺の姿見るなり、隆也の背中に隠れて。 そこまで、怒ってるんやったら、ちゃんとそう言って欲しいわ。 謝る位、させてぇや。  
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