Vol.09

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  零れた言葉は、ほぼ無意識。 やけど。 あぁ、そーゆー事か。と、納得する自分が居た。 「っ、」 勿論、たった今、ソレを自覚した俺の言葉を、朱音が信じる筈も無くて、 まったく痛みを伴わない、力ない手が、俺の頬を叩く。 「どーし、て、そんな、嘘いうの、」 何度も何度も俺を叩いて、 「私の料理が、好きな、だけじゃない」 「……」 「ご飯なんて、……そんなの、他、探せばいーじゃない」 まるで子供みたいに、ボロボロに泣きじゃくる。 泣かせたい訳やないのに。 自分も、散々、誰かの「好き」を信じなかった。 せやけど。 信じて貰えんのって、思ってた以上に、傷つくんやな? 散々、信じひんで、自分だけ信じて欲しい。なんて、そら都合良すぎやんな? 「朱音」 「や、だ!」 拒絶する腕を、それでも掴んで。 極力、優しく引き寄せて、その身体を抱きしめる。 「っ、」 自分の膝に乗せて。 「ごめんな」 「や、だ」 玄関で、何してんやろな?お互い、靴も履いたままやし。 「好きやで」 人生で何度目やろ? 何年振りかも解らん位、久々の自分からの告白の言葉。 こんな状況で、な。 「うそ、つき」 フラれる以前に、信じても貰えん、言葉。 自業自得。 俺が、自分で招いた結果。 「信じひんでもえぇよ」 「……」 「せやけど、ホンマやから、な?」 涙でグチャグチャな朱音の、その頬を撫でる。 俺を見る眼は、潤んで揺れて。 不安や困惑、色んな感情。 「信じひんでもえぇから、……避けるんは勘弁して」 白い肌は泣かせすぎた所為で、赤く蒸気してる。 「チャンスくれへん?」 「……、」 「好きになってくれ。とは言わんから、メシも要らんから、……せめて今迄通り、会いたい」 金曜の夜、店に朱音の姿は無くて。 きっと、土曜や日曜なら居たんかもしらんけど、避けられてるん解ってて、その曜日に行く勇気は無かった。 やけど、 「ほんま、会いたかってんで?」 自分でも驚く程、会いたかった。 「何、それ、」 「朱音、」 「も、何なのぉ」 その、細くて長い指が、俺のシャツを強く掴む。 「私が蓮さんの事、好きなの、知ってるクセに、……好きになってって、言わないって、」 「……もう、愛想も尽きたやろ?」 「嫌いになれるんなら、もっと前になってた!」 叫ぶ様な声。 耳に響いた言葉は、……凄い、告白やんな?  
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