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・・・その服は、"本来"ならばあるはずのないモノだった。二度目の死を迎える直前にも身にまとってはいない。此処にある要素がないのだが。
何故そのようなモノが存在するのか。それは今は彼自身にもわからず、それは少なからず"意味"のあるもの。彼は、まだ知らない。
「にしても我ながら大した成長してねぇのな。全然キツくねぇや」
「リンヤ君、ボルゼさんは?」
「ん、あぁ。中でブッ倒れてるよ」
一瞬聞き覚えのない名だとシェリアは思ったが、昨日アイリスから聞いていたのを思い出す。
ボルゼというのは、あのドワーフの名。シェリアとしたことが相手の名を聞き逃すという失態を犯したことにこの場を去ってから気づき、アイリスに聞いたということだ。
アイリスは昨日話をした時に尋ねていたらしい。
「まぁ上がれよ。まだ朝っぱらなんだしゆっくりしようぜ」
「そうですね」
朝をのんびりする程度の時間はある。二人は言葉に甘え家にあがろうと一歩踏み込む。そこで、少し鼻につく臭いを感じた。
そして、目の前臨也がいたことで気づかなかったがボルゼが無造作に床へ転がっていた。ご丁寧にいびきもかいており、辺りには酒瓶が散乱していた。それだけで十分状況が理解できる。
「・・・呑んだんですか」
「俺は呑んでねぇよ。おい、オッサン起きろ」
体を揺さぶるも、起きる気配はない。ため息を吐くと、臨也はボルゼから離れ椅子に座る。
「こりゃもうちょいかかるな。まぁ、オッサンはすぐ起きるから大丈夫だろ」
「私たちはどうすればいいんですか」
「トークでもしようぜ。おら、英雄ご自慢の武勇伝聞かせろよ」
「ムカつくので嫌です」
「テメェ・・・」
向かいに座るシェリアはきっぱりと返す。そこでシェリアの隣りにいるアイリスがこれからのことを口に出した。
「そうそう、リンヤ君はアタシ達と同じ学園に通うだろうけど同じ年、でいいんだよね?」
一応、という気持ちで確認した。二年前、教室にてシェリアの隣にあった机はおそらく臨也のだ。なのでこんな会話は場を弾ませるだけのもの。しかし、返ってきた言葉はあまりにも予想外で。
「園崎臨也、二十歳です!」
「え?」
「・・・はい?」
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