自称凱旋

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「・・・さて、話の途中だったな。親衛隊の安否とこれからのことだが」 「何の話ですかそれは」  当然のように訳のわからないことを言った臨也にシェリアは呆れる。 「ジョークジョーク。・・・そう言えば、もう他の奴らは知ってるのか? 俺のことを」 「えぇ、昨夜全員に伝えましたよ」 「皆楽しみにしてるよ!」 「やだ、人見知りにはハードル高い」  この世界には魔法石と言われるものがある。見た目は宝石のように綺麗な石だが、希少というほどでもない。その魔法石に特別な方法で加工をすると電話のようなテレパス機能に変わったりする。特定の人と通信するには、その個人の魔力を流すだけでいい。その魔法石を全員持っているので、昨夜通信したということだろう。  そして、臨也は内心浮かない状態だった。以前学園に通っていた時は圧倒的な力を持っていたので、何も気にすることなく気楽に過ごしていた。  しかし、今回は違う。以前の力を失った臨也にもうそのルールは適用されない。臨也自身、なぜシェリアとアイリスに嫌われていないのか不思議だったりする。  少なくとも、あの力を持っていたからこそ惹かれていた部分はあったはずだ。例えばココロという一人の英雄。彼は完全に臨也の力に心酔しきっていた。例えばライクスという一人の勇者。彼は己以上の実力を持った臨也に興味があった。  もし臨也に人徳というものがあるとしたら。何はともあれキッカケはあの力に間違いない。だからこそ、臨也という人物は悩み・・・。 (まぁどうにでもなるだろ、うん)  訂正。彼にはこんなのすぐ片付けられる問題のようだ。 「にしても学園かぁ。カレーの貴族は元気にしてるかねぇ」 (カレーの貴族・・・?)  臨也の言葉には疑問しか浮かばなかったが、面倒なので放っておこう。  そう二人が思っているとボルゼが帰ってきた。 「ふぃー、さっぱりした!」  顔面を両手で強く擦るその姿は、見た目相応の年齢を感じさせる。 「それでお前ら。すぐに出るのか?」 「答えろ水色」 「うるさいです口を閉じてください。そうですね、仲間達の都合もあるのですぐに発つつもりです」 (そこまで言うか)  安心と信頼のシェリアの返しにもはや感心してしまう臨也であった。
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