フェンス越しの彼

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「凄い、あの人……」 フェンスに触れていた両手に力を入れるとカシャン――と微かに音を立てた。 そんな音さえも聞こえないくらい、フェンス越しでボールを追い駆ける彼に釘付けになった。 一目惚れ。 古臭いけど、この言葉が一番似合う。 17年生きてきて初めて体に感じる何とも言えない不思議な震え。 ――目が離せない。 闇夜が覆う空に、少し欠けた月の光が、スポットライトのように彼にあたっていた。 ……違う、そうじゃない。 本当は何人もボールを追いかけているのに、私は彼だけしか目に入らない。 サッカーボールを巧みに操り敵をかわし、不敵な笑みで軽やかにゴールを目指す彼に……一瞬にして心を奪われた。
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