眼差しの音

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その視線は実際、音がした。 髪が焦げる時のような、微かな音が。 その音が聞こえる時、私の肌は、触れられたように、輪郭をくっきりと浮き上がらせて、波打つ。   初めて自分の肉体というものを、強く意識したのも、やはり、あの視線のためだった。 明るい日差しの中でも、カーテンを閉め切った薄闇の中でも、その視線を感じると、私の身体はざわめいて、その音に囚われたくなった。 .
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