見習いさんの物語

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*@見習いさん* 「はじめまして」 ライフ、――多分lifeと書くのだろう――そう名乗った女の子は電卓をぱちぱち、とやりながら笑った。 多分偽名だろうなぁ。 「はぁ、はじめまして……」 対する此方はデジタルカメラのフォーカスをかちかち、と調節しながら間抜けに返した。 何かを弄りながら人と会話は失礼に当たるだろうが、相手も五月蝿い程ぱちぱちやっているので失礼には当たらないだろう。 見習いカメラマンは人との接し方も見習いである。 「私、商売してるの」 電卓を見せびらかしながらライフが言った。 「はぁ……ふぅん…」 我ながら適当な返事だ、と思うが仕方ない。 なにせ、初対面なのに唐突に『ねぇ、言葉売らない?』と変な申し込みをし、変人だと自己申告してくれた。 しかも次には何故か自己紹介で、此方の頭は混乱でぐるぐるだ。 「言葉売らない?」 二回目の台詞を行ったライフはまたにやにや、と笑った。
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