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俺、藤村夏希は七夕が嫌いだ。今まで17年間一つもいい想い出がない。
幼稚園の頃、楽しみにしていたお泊り会に風邪をひいていけなかった。
小学生の時、一生懸命飾った七夕の短冊が夕立でぐちゃぐちゃになっていた。
そして……中学3年の七夕、好きだった幼馴染に告白しようとおもったが、結局できなかった。
そのことを俺は、今でも後悔していた。
俺の幼馴染み、祈藤七海(きとうななみ)とは気づいた時には一緒にいた。親同士が仲がよかったせいか、よく一緒に遊んだりすることが多かった。
行事ごとも一緒にやることが多かった俺たちは、誕生日やクリスマスも一緒に祝ったりしていた。
あるとき、小学3年の7月、七海が家に来て
「ねえ夏希、七夕にお星さま見に行かない」
と、純真無垢なキラキラした瞳で聞いてきた。
「なんで?」
と、アイスを食べながらいつものフリースタイルで聞き返す。
「あのね、あのね、七夕の夜の星ってすごくきれいなんだって。それにね、七夕って織り姫様と彦星様が一年に一度しか会えない日なんだって。お母さんから聞いたんだ」
今にも走り出しそうに足をバタつかせながら、夢中で話してきた。そんな七海を見ていたら楽しそうだなって思えてきた。
「あら、星を見に行くの?いいわね。」
今の話を聞いていたのか、母さんが話に割って入ってきた。
「星を見るんなら公園の上にある高台がいいわよ。あそこは夜は町の光がないからとってもきれいに見えるのよ。今度、おばさんと一緒に行きましょうか。」
「うん!」
その元気の良い返事と笑顔に母さんも笑顔になる
「夏希も行くでしょ?」
勝手に話が進んでいく。でも、いつもこんな感じだった。
それで俺は決まっていつもこう言っていた。
「うん、行くよ」
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