第2章

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「よう」 ごく自然に二人の視線が重なる。 紗江は女の顔を見つめて、ごくりと息をのんだ。 今まで見た中で一番と言ってしまいたくなるほど、美しい女だ。 明るい茶色に染めた髪は綺麗にカールされて肩にかかり、彼女が体を揺らすたびに弾むように跳ね上がった。 「なにしてるの、こんなところで」 「まあ、ちょっと……」 歩は、じっと女に目を向けていたが、それをなんとか引きはがして紗江に向けると 「この子と、話してたんだ」 その時になって初めて女は紗江の存在に気が付いたようだった。 まるでいないように扱われていた紗江は、話題に出されて慌てて姿勢を正す。 「誰?」 「本橋紗江ちゃん」 紗江は頭を下げたが、女はただ紗江を見つめているだけだった。 その表情は、凍り付いたように何も読み取ることができないもので、紗江を当惑させた。
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