第2章

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「で、こっちが朱美。藤吉朱美(ふじよし あけみ)」 何も言わずにいる女の代わりに歩が言う。 「どうも」 と呟いた紗江への返事は、またしてもなかった。 少なくとも紗江にとっては気まずい沈黙が流れたあと、唐突に朱美が言った。 「歩の彼女なの?」 そんなわけないでしょ! ちっとも見られていない紗江のほうが、よっぽど声をあげてやりたかった。 けれども、それよりも早く口を開いたのは歩のほうで、 「そうだよ。この子、俺の彼女」 と、とんでもないことを言ってのけたのだ。 「は?」 抗議の声をあげたのは、紗江だ。 しかし彼女の声は完全に無視されていた。 「へえ。彼女、できたんだ」 「まあね。朱美は彼氏とうまくいってるの?」 「うん……まあ」
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