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それは先ほどの、家康に対する一撃で明確だった。
殺る。殺るしかない。
「うわああああ゛ああ!」
狂気を振り撒きながら、子供に向かって迫る牛若丸。
危険速度を使い、姿が消え失せる。
俺は冷静に刀を構えた。
すかさず背後に回り、背中から一太刀をお見舞いしてやる。
これまでに感じた事がない極限の緊張感。
手は一瞬にして汗で濡れた。
直後、子供が握り締めた拳を手前に引く。
子供の瞳は動揺することなく、確実に牛若丸の動きを捉えていた。
俺は目の前で繰り広げられる残虐に、意識を一点に集中させた。
仲間を犠牲にしても、チームのリーダーだけは守らなければいけない。
チームを守るため、苦渋の選択。
牛若丸に向けて放たれる鋭く重たい拳。
──グシャ
鈍い音が子供の拳の先で鳴った。
拳は牛若丸の胸部辺りを正確に捉え、凄まじい威力から自然と抉り出す。
牛若丸の胸部は、肉を裂かれ心臓を貫いて破裂する血液と共に真っ二つに割れていく。
俺はその少し前に動き出していた。
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