第8話 【正臣の秘密】

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彼の大きな手のひらが、閉じられた小さな手を包み込む。 染み入るように伝わる、彼の体温。 水を得た魚のように、複雑な心境の中で目覚める甘美なときめき。 ―――顔が、熱い。 ..こうしてまた、私を惑わすの? 『俺を嫌いになったか?』なんて… …私、あなたに好きだなんて言ってない。 誰もが認めるエリートドクターに抱かれるチャンス到来だなんて、女なら多少の興味はあるじゃない? あなたの持つスターテスに魅力を感じただけ。 …そして私も、好きだと言われた訳じゃ無い。 最初から、恋心なんかじゃない。 お互いに…これは、恋なんかじゃない。 ―――なのに、どうしてこんなに胸が苦しいの? 重なった熱に視線を落とし、下唇をキュッと噛んだ。 自分の心に唱える強がりな言葉とは裏腹に、手の甲から伝わる彼の体温が愛しくて、もどかしくて、…切なさが増す。 あなたは心の暗闇に射し込んで来た、夢に誘う眩い光。 真実が受け入れがたいものだとしても、嫌いになんてなれない。 私の気持ちを知っていて、わざとそんな無粋な質問するのね。 あなたは残酷で、…狡い人。 重ねられた手を、私はゆっくりと引き抜く。
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