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店内に入った瞬間、客の視線が一気に夏子へと注がれた。
それほど夏子がこの店に入る事は場違いだったのだろう。
驚きとため息。そして俺に対する嫉妬。
(チビチビ飲みながら嫁や上司の悪口を言ってるあんたらには一生縁のない女だろうな……)
サラリーマンのオヤジ達に交じってカウンターに座り、キンキンに冷えた生ビールのジョッキで乾杯した。
夏子はゴクゴク喉を鳴らしてビールを飲むと、
「美味しい~! 」
こういう店で気取る女は嫌いだ。
郷に入ったら郷に従え。
この容姿でそれが出来る夏子は、とりあえずイイ女なんだろう。
「オヤッさん、お任せで適当に焼いてくれる? 」
「はいよ!
お嬢さん、嫌いな物はあるかい? 」
「何でも大丈夫です! 」
「おっ! 今時の若い娘にしちゃ偉いもんだねぇ
近頃は やれ固いのはダメ、油は太るからダメ、挙げ句に椎茸は食えませんときたもんだ! 」
「私、育ちがよろしいもので……
ふふふ」
「………
わっはっはー
お嬢さん、気に入った! 今日はゆっくり楽しんで行きな! 」
「はい! ありがとうございます! 」
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