第1話

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辻林高校二年生、檜山真希 少しだけ茶に染めた、肩まであるセミロングの髪。 背は少し小さくて、百五十。 と、といっても、そこまで小さくない……と思う、たぶん… とりあえず、それが私 海が近くにある、田舎の高校に通う普通の女子高生。 現在六月中旬。 梅雨もそろそろ終わり、学生にとって一番嫌なイベント、期末考査が近づきつつある今日、私はいつものように登校し、教室にいた。 年季が入った古びた校舎。 近々耐震基準が何たらで工事が始まるとは聞いている。 「おっはようマキ。今日もかわゆいのぉ~このこのぉ~」 「うわっ!?ちょっ!?……もぉ、髪が乱れちゃったじゃん。」 席に座ろうとした時に、突然髪をくしゃくしゃにされた。 勿論その犯人は分かっていて、私は眉を寄せながら振り向く。 「おはよう、佐紀。」 この高校に入ってからの友人、佐紀。 友人の私が言うのもあれだけど、かなりの美人さんだと思う。 身長が高くて、黒の長髪。 性格だって、ご覧のとおり明るくて、高校の中でもかなり人気がある。 …ちょっと劣等感を抱いてたり…ハハ… 「どしたの?」 「ん、うんん。なんでもない」 手を振る私を見ながら横の席に座る佐紀。 私も席に座って、いつものように話を始めていた。 夏休みはどこか遊びに行くのか、とか、テストのことだったり、彼氏のことだったり… この高校は校則がかなり緩くて、結構服装がアレな人も多い。 その原因は、昔この高校にいたヤンキー…噂では女子生徒だったらしいけど、その人がいろいろ根を回したせいだとか…なんとか… だから、私の髪の色も含め、佐紀の髪の長さも、ある程度自由がきいていた。 まぁ、中にはもちろん好き勝手いじる生徒もいるにはいるが… クラスの中がいつものように騒がしくなり始めたころ… ガラッ… 「…」 朝のショートルームの時間ギリギリになって、登校してきた生徒がいた。 ―――…… そして、途端に静かになる教室。 先ほどまで如何わしい本を読んで騒いでいた男子たちも、そそくさと本を隠して口をつぐむ。 「…」 その登校してきた生徒は、静かになったクラスを一瞥したが、何も言わず…というか、最初から興味など無い様に入ってきて、自分の席に座った。 席に座り、目を閉じ、無言の彼を見たクラスメイト達は、一度ホッと息を吐く。 そして、徐々に先ほどのようにクラスは騒がしくなった。
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