第1話 お菓子な君に恋をした

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. 「そっか。仲直りできるといいね。」 「はい!」 珍しく気の利いたことが言えたのは、相手が自分よりも幾分か年下の女の子だったからか。 それとも、彼女がもたらしていた温かい空気のせいなのか。 俺の言葉に明るい返事をして、その女の子は深くお辞儀をして店をあとにした。 それから数分と経たないうちに、エプロン姿の母さんが登場する。 いかにも夕飯の準備をしていました的な雰囲気を出しながら。 「あら、お客さん来ていたの?」 「あ、うん。」 「あらあら、もしかして完売しちゃったの!?」 「……まあね。」 空になったショーケースを見て、嬉しそうな声を上げる。 あまりに喜ぶものだから、本当は4つ残っていたけれど、その事実は伏せておいた。 ケーキが完売するなんて、クリスマスでもない限り有り得ない話だから。 「今夜はお祝いね、すき焼きにしなくちゃ!」 そう言って母さんは、浮き立つ足取りで裏へと戻っていく。 そして俺も早々に片付けを終えて、明日の準備がてら厨房へと戻った。 .
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