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1.甘い痛み
人に知られたくないことが一つ増える度に、それを隠そうとして笑顔が増えている自分に気がついたのは高校に入学して少し経ってからだ。
寝不足で酷い顔なのは、毎晩夜更かしして好きな少女漫画を読んでいるってことにした。
これが、友達になれたばかりの子についた一つ目の、嘘。
お父さんに殴られて腫れた顔や怪我をした手足は、そそっかしくて二階の階段からよく足を踏み外すことにした。二つ目の、嘘。
せっかく出来た友達に引かれたくない。だから絶対に信じてもらわないといけない。さも本当にあったように話すために、私は違う自分を毎日精一杯演じている。
底抜けに明るくて、めちゃくちゃドジで、漫画おたくで、ちょっと変わった子。それがみんなの知る私、宮田陽香だ。
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