第2話

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 あれから俺たちは毎年のようにあの高台に通った。  俺と七海以外の友達と一緒に行ったり、お互いの家族と一緒に行ったり、お菓子やおにぎりを持って行ったり、曇ったり晴れたり、毎年形は違えど、あの高台で二人で空を見上げた。  でも何故か、不思議と雨だけは降らなかった。  中学二年になった俺達はクラスも変わり、話す機会も昔と比べると随分と減った。  登校時刻も下校時刻もお互いバラバラで、学校で交わす言葉なんてすれ違った時の「よっ」「あ、おはよー」ぐらいだ。  既に皆無に等しいと思う。  話す機会は家にいる時くらいのようなものだ。  お互い部屋が向かいにあるから窓を開けて家と家の隔たり越しに言葉を交わす。  これが俺は好きだった。  いつも七海とたわいない会話。学校でのあった事の事後報告みたいな、しなきゃいけない事じゃないのに毎日学校であったどうでもいい事話し合って、腹抱えて笑ったり、怒ったり、さわいだり、互いの声が飛び交うこの空間は永遠に続くものだと思っていた。  俺には七海がいつもそばにいるのが当たり前になっていたんだ。    季節は初夏、6月下旬。  真夏に向けての日差しが徐々に強くなり、気温も上がり始め、気分の悪いじめじめとした日本特有の空気感が肌にまとわり付く。  この時期になれば毎年の恒例行事を意識し始める頃だ。  高台の七夕。  今年も俺は七海と一緒に見に行くのとばかり考えていた。  でも、今年は違った。  意表を突いたように珍しく七海が俺に学校で話かけてきた。 「今日一緒に帰ろう」  そういったのはあの日の打ち合わせを帰りにするんだとばかり思っていた。  俺の思い過ごしだった。  帰り道、俺と七海は久しぶりに並んで帰った。  終始、無言のまま俺たちは歩き続ける。  いつ話を切り出そうか、機会を伺っている俺と同様に七海もこちらを伺うよう、チラチラとこっちを見てくる。  いつも部屋で向かい合って話しているのに、久しぶりってだけで緊張して動きが硬くなった。  そのせいかやけに喉も渇く。  流石に俺はこの沈黙に耐え切れなくなって意を決して言い放った。 「なぁ、今年の七夕はどうする?」   すると七海の動きが一瞬硬直した。      
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