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その一瞬の行動に不信感すら覚える事なく、俺は話を進める。
「今日はそのために一緒に帰ろって誘ったんだろ?」
そんな俺の問にも無反応のまま、申し訳なさそうに俯いている。
「どうしたんだよ、そんなに暗いのは七海らしくないよ」
「……そ、そんな事ない」
「でも……」
でも、そこには教室で見るような七海の明るさはなかった。
あるのは言いたいことが言い出せないでいる、喉の奥に何か詰まらせているような息苦しさだけだ。
それを悟った俺は七海にそれ以上追求することができなかった。
七海の言い出せないことが俺に関することだったら。もし、俺の環境が一変するような一言だったら俺はどうするだろう。
そう思ってしまうと何故がマイナスの事しか考えられなくなる。
幾分か家へと向かう道を進んでから七海の足が止まる。そこでまだ言いにくそうに目を泳がせているが、何か踏ん切りを着けたかのように強い意思を持った視線が俺に向けられる。
「私、七海に話があって帰りに呼んだの」
「ああ」
「これはとても大事なことだから真剣に聞いて」
その後少しの間があり、暫しの緊張に包まれる。
「今年で高台での七夕は終わりにしようと思うの」
「は?」
それは全く考えていなかった答えだけに驚いた。その時の俺の顔はどんな顔をしていたんだろうと今更ながら思ってしまう。
「何で急に辞めたいなんて言うんだよ」
「………」
答えは無い。無言のまま、何を言うこともなく。でも七海の顔を見ればその答えがどれほど悩んで出した答えなのか理解できた。
でも俺は―
「せめて理由ぐらい教えてくれないか?」
俺にとって高台の七夕は思い出の大部分を占めている。最初は仕方なく始めた七夕も今じゃ楽しみの一つになって、時期が来れば意識してそわそわしたりしていた。今じゃ俺にとって高台の七夕はかけがえの無いものになっていたんだ。
でもそれを始めた本人が辞めたいって言うんだったらそれでいい。けど、俺は七海と空を見上げてきたんだ。
だから理由くらいは聞かせて欲しい……
「……………私は…もう一人で進みたいのよ」
その時言った七海の言葉が俺は理解できなかった。何についていっているのか、それが高台の七夕と何の関係があるのか全く意味が分からないかった。
「それってどういう……」
タイミングを見計らったように七海は大きく一歩踏み出す。
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