道角でぶつかるのはパンを加えたヒロインだけにあらず

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  『そっちに行ったからお前が仕留めな』 曇りの夜。雲により月明かりが遮断された今、俺が要る路地裏の暗がりを照らす光源は無い。 そんな視界の悪い中、耳にかけてあるイヤホンから渋みのある声が聞こえ、その内容に襟についてるマイクが拾わない程度に溜息をつく。 「了解。キリキリ仕留めるよ」 ワシワシと頭をかきながら返答し、徐々に近づいてくる足音に手に持っていた木刀を両手で握り直し構える。 「チィ!こっちにもいやがる!」 暗がりで姿こそ確認できないが。息切れや服擦れの音で目の前にいることは確認でき、更には狭い路地裏という事もあり今回の標的である男は真正面にいる事もわかる。 情報では標的は13人と比較的大勢だと聞いていたが目の前の気配から察するに一人のようだ。大方俺の仲間に無双された結果、ここまで逃げ切れたのが一人なのだろう。 そんな事を考えている中。息切れとは別にシャキンっと金属が擦れるような音が聞こえ、ナイフかなにか獲物を取り出したであろう男を注視する。暗くて見えないけど。 「刃物とは危なっかしいな。銃刀法って知らないのか?」 「あぁ!?テメェの仲間はマシンガンぶっ放してんだろうが!」 正確にはエアーガンなんだけど。改造しまくりで殺傷性がヤバイ感じに高いから反論できない。 「別にアンタに恨みはねぇけど。恨みを買うような事しちまったんだから仕方ねぇよな」 「ふざけんな!俺は上の奴等の命令でやっただけだ!やるんならそいつ等からやれってんだ!」 「奇遇だな。俺も上からの命令でこんな夜更けにこんな路地裏でこんなモン構えてんだ。お互い下っ端同士苦労するな」 俺より偉いのに苦労してる人が要るけど。なんかキツイ事を頼まれれば頼まれる程恍惚の表情を浮かべてるんだよなあの人。真性のマゾに違いない。 でもドSが多すぎてその人だけじゃ対応しきれず、俺にまで飛び火するのだから困る。 「クソがぁぁぁっ!!」 痺れを切らしたのか、疲労と命の危機という緊迫した状態のせいで冷静さを失った男は、木刀を構える俺に躊躇無く咆哮しながらナイフを振りかぶりながら突進してくる。 視界が暗いためにナイフを確認するのは困難だが、この後の男の始末を考えれば獲物の所在を知る必要も無いと判断し、木刀をナイフを持つ腕に思い切り振り落とす。
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