~電話~

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でも、それもあとちょっとの我慢だ。 だって、少し前に本で見つけた話にあったし 『メリーさんの電話』 私の友達である人形と、同じ名前である人形のお話。 もうすぐ、友達【メリー】が迎えに来てくれる。 私はそれだけを希望にして、電話が掛かってくるのを待ち続けた。 家の中で電話の着信音が響くと、私は急いで扉の鍵を開けて部屋を飛び出した。 電話の子機を手に取って、耳に押しつける。 「あたしメリーさん。今ゴミ捨て場にいるの・・・。」 来た。やっと・・・電話が掛かってきた・・ 「メリー! メリーなの!? 早く私を迎えに来て! 私をそっちに連れて行って!」 普通の人なら驚くだろう。 怖がるだろう。 私は怖いはずがなかったのだから 私がまだ喋りつずけているにもかかわらずメリーは電話を切ってしまう。 私はそれに、本で読んだ内容を思いだした。 あの話が本当なら、メリーは今、私の元へと向かっているはず 私は電話の前に座り込みながら、それが再び着信音を鳴らすのを待ち続けた。 時刻が昼に差し掛かったところで二回目の電話が鳴る。 「あたしメリーさん。今貴方の住んでいる街にいるの…」 今ってことは隣町にいたの? 遠い遠いところに行ってたの? ぜったいに許さない 私は父と母に、ますます怒りをつのらせる。 「メリー、ごめんね。あの二人から守れなくてごめんね……」 メリーは怒っているのか、また電話を切ってしまう。 メリーは捨てられたことによって、私よりも寂しい思いをして苦しんだのかもしれない。 いや、きっとそうなのだろう。 メリーが怒って、もう電話を掛けてこないかもしれないことに、私は恐怖を覚えた。 苦しいだけの世界に取り残される・・・考えただけでも絶対に嫌だ。 私は不安に押し潰されそうになり、体が震えて歯がガチガチと鳴った。 不安を裏切って、すぐに三回目の着信音が鳴ってくれる。 「あたしメリーさん。今あなたの家の前にいるの」 「______っ!?」
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